美術館巡りを愉しむ美術館巡りを愉しむ


Let's enjoy visiting art museums! 美術館巡りを愉しむ 取材・文 伊藤レナ

国立新美術館 東京・六本木

「文化都市」を標榜する六本木の中心的存在 2007年1月21日オープンのニュースポット!

国内最大級の展示スペースを持つ、日本で5つ目の国立美術館



美術館外観:日本で5つ目の国立美術館として開館した国立新美術館。波立つガラスのファサードの輝きが新しい美術館の息吹を感じさせる。

 国立新美術館
〒106-8558 東京都六本木7-22-2
TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル) FAX:03-3405-2531
アクセス
地下鉄千代田線/乃木坂駅(6出口)より直結
地下鉄日比谷線/六本木駅(4a出口)、
地下鉄大江戸線/六本木駅(7出口)から徒歩4分
休館日
火曜日(祝日または休日に当たる場合は開館し、翌日休館、年末年始12/29-1/3)
開館時間
企画展 10:00-18:00(入館は17:30まで)
※会期中の毎週金曜日は20:00まで(入館は19:30まで)
公募展 ※平成19(2007)年4月から開始
入場料
企画展ごとに定める。公募展は美術団体によって異なる。
URL

 2007年1月21日に開館した国立新美術館は、東京国立近代美術館、国立西洋美術館(東京)、京都国立近代美術館、国立国際美術館(大阪)に次ぐ、日本で5つ目の国立美術館。同館は、コレクションを持たないが、国内最大級の展示スペースを活かし、さまざまな展覧会を開催する。

 森美術館(03年10月開館)、サントリー美術館(東京ミッドタウン内、07年3月30日開館予定)他、美術やデザイン関連の施設が続々開館し、「文化都市」を標榜する六本木の中心的存在となること必須だ。



最先端を行くクリエーター集結!黒川紀章と佐藤可士和!



美術館俯瞰:奥に見える緑が青山公園。散歩がてら立ち寄りたい。

 波打つ巨大なガラス張りの建物は、国立民俗学博物館、沖縄県庁舎、ゴッホ美術館別館などを手掛ける世界的建築家、黒川紀章(くろかわ・きしょう)(*1)氏の設計。館内に足を踏み入れると、3753枚のガラスを使用したカーテンウォールから降り注ぐ日差しが美しい。

 シンボルマーク・ロゴのデザインは、佐藤可士和(さとう・かしわ)(*2)氏。氏は、SMAPのCDジャケット、楽天ロゴ、NTTドコモFOMAのデザインなどを手掛ける人気アートディレクターだ。


(*1)黒川紀章(くろかわ・きしょう 1934- )

1957年、京都大学工学部建築学科卒。1964年、東京大学大学院建築学科専攻博士課程(丹下健三研究室)修了。近年は、ガラスのファサード、ドーム型、波立つような曲線を特徴とした作品が多い。テーマは、環境や伝統と現代との共生。思想家としても知られ、著作は100冊にもおよび、著書『共生の思想』(徳間書店)は、英訳、独訳がある。

(*2)佐藤可士和(さとう・かしわ 1965- )

1989年、多摩美術大学グラフィックデザイン科卒。同年博報堂入社。2000年、クリエイティブスタジオ「サムライ」を設立。名前は知らずともキリンビール「極生」やTSUTAYAカードなどのデザインが記憶にある人も多いはず。デザインと広告に少しでも興味がある人には説明不要のスーパースター。



ロゴデザイン 国立新美術博物館 シンボルマーク ロゴタイプ 英文

人気クリエーター・佐藤可士和氏によるロゴデザイン。「新」のモチーフには、「日本の美術館として様々な新しい試み、先進的で独創的活動を展開していく」という美術館のコンセプトが込められる。


キャッチフレーズは「開かれた美術館」




館内1階:椅子に腰掛けてのんびり日向ぼっこも良い。ガラスは日射熱・紫外線をカットする。

 「美術館という場に対して、敷居が高いというイメージを持っていらっしゃる方々に気軽にいらしていただきたいと考えております」と広報・小島 佳さん。


 キャッチフレーズは「開かれた美術館」だ。

 併設のレストラン、カフェ、ミュージアムショップだけでも利用可能。千代田線乃木坂駅から館へは直通だから、館内の椅子に腰掛けて待ち合わせにも利用できる。また、青山公園などがある緑豊かな周辺環境も魅力だ。


 「お散歩がてらふらりといらして頂いた際に、面白そうな展覧会がやっているな、じゃあ、観ていこうか…という気軽な感覚で美術館に足を運んでいただければと思っております。また素晴らしい建築をご堪能頂くだけでも十分価値があります」



館内1階:コーンの上がレストラン『ブラッスリー ポール・ボキューズ ミュゼ』。緑が見渡せる心地よい空間を愉しみたい。

近現代美術を主に発信、「日展」など公募展開催も



館内地下1階:館内の椅子は、デンマークのフリッツハンセン社製というこだわりぶり。

 館では、近現代美術を主に発信していく方針だ。独自の企画展として「世界から注目されている日本のメディアアートや建築などを紹介していく」という構想もある。

 開館にあたっては、文化庁メディア芸術祭10周年企画展『日本の表現力』(07年1月21日(日)~2月4日(日))を開催。現代日本を代表するメディア芸術として、「新世紀エヴァンゲリオン」「スラムダンク」「やわらか戦車」らを取り上げ、その表現の源流を縄文時代の土偶や江戸時代の芸術に遡った。

 これまで上野の東京都美術館が中心だった「日展」「国画展」らの多くの美術団体展の開催も同館に会場を移す。また、新聞社・テレビ局の大型企画展も集中することが予測される。


 これからも日本文化を先導する新たな美の殿堂、国立新美術館の活動を期待したい。


展覧会情報、開館記念展「20世紀美術探検」

吉村益信《豚・pig lib;》1971年(1983年/95年加筆)
所蔵:兵庫県立美術館 山村コレクション

 2007年1月21日(日)から3月19日(月)まで、開館記念展「20世紀美術探検-アーティストたちの三つの冒険物語」を開催。「物」をテーマに国内外の美術品でキュビズム以降の表現の流れをたどる。



レストラン&カフェ&ミュージアムショップ




レストラン『ブラッスリー ポール・ボキューズ ミュゼ』(3階):ランチ(プリフィックスコース)1,800円、ディナー(アラカルト)1,200円~3,500円
ミュージアムショップ『スーベニアフロムトーキョー』(地下1階):アートグッツを眺めるのも愉しいひと時。

 3階にあるレストラン『ブラッスリー ポール・ボキューズ ミュゼ』では、周囲の景色を眺めながら優雅に正統派フランス料理を堪能できる。また『サロン・ド・テ ロンド』(2階)、『カフェ コキーユ』(1階)、『カフェテリア カレ』(地下1階)では、軽食、スイーツなどを手軽に愉しめる。CIBONEが手掛けるミュージアムショップ『スーベニアフロムトーキョー』(地下1階)のセレクトグッズやオリジナルグッズも見逃せない。

取材・文 伊藤レナ

アートライター。明治学院大学大学院文学研究科芸術学専攻博士課程前期修了。専門は日本近世(江戸時代)絵画。その他、洋の東西を問わず美術、映画、音楽、演劇、文学など幅広く芸術全般に詳しい。
●URL● http://www.e-rena.net