今日から始める男の趣味今日から始める男の趣味

蕎麦打ちを愉しむ Part2 旨い蕎麦を自分で打つ 山形・酒田市生石『大松家』 漆山正美氏 名人が丹念に打つ蕎麦処で舌鼓を打つのもいいが、自分で蕎麦打ちをした蕎麦をたぐるのは、また格別な味わいだろう。とりあえず材料も道具も、身近なものから始められるのも魅力である。打つたびに違いがあり、打つたびに奥の広さを感じさせる蕎麦打ちは、蕎麦好きな男たちの極上の趣味として魅了されるに違いない。

Part1 手打ち蕎麦の極意を語る Part2 旨い蕎麦を自分で打つ

山形庄内地方から伝わる田舎蕎麦。芳醇で風味豊かな蕎麦を自分で打ってみる。

 東京銀座に店を構えて25年になる大松屋「本店」他2店舗では、田舎蕎麦だけでなく、四季折々の食材による炭火焼コースで、くつろぎのひとときを愉しめます。
 蕎麦の打ち方、つゆに至るまで先代から受け継ぎ、庄内地方の伝統を守り続ける手打ち田舎蕎麦。その洗練された喉ごしと風味豊かな蕎麦を、温もりのある囲炉裏でゆったりと味わうのも格別ですが、自分で蕎麦を打ってみるのもまた、風流な趣味ではないでしょうか。


取材協力 ■東京銀座 大松屋「本店」
懐かしい郷愁に包まれた囲炉裏で、ゆっくりと炭火焼コース:4,800~9,000円が愉しめる。
住所/東京都中央区銀座6-5-8エルドールビル2F/ TEL:03-3571-7053
営業時間/17:00~22:30(平日)16:30~21:30(土)定休日/日、祝日

蕎麦打ち道具



家庭で手軽に始められる蕎麦打ち。道具を揃えていくのが愉しみとなる。

 ボール、のし板、のし棒1本(90~105㎝位)、そば切り包丁、まな板、こま板、蕎麦粉、小麦粉、打ち粉、刷毛など、道具はいたって簡単。家庭ですぐにでも始められるのが蕎麦打ちの魅力でしょう。

蕎麦打ちの手順


 『大松家』では、蕎麦は地元の酒田市大平地区で昔から栽培されている「出羽でわかおり」と「階上はじかみ早生わせ」の2種類の玄蕎麦の挽きぐるみ。季節により夏場は8.5:1.5、冬場は9.5:0.5の割合、そして、つなぎは生石の湧き水を使用しています。このこだわりが、野趣あふれる蕎麦の香りと挽きぐるみ独特の食感、そしてたっぷりと練り込まれたコシの強い逸品に仕上がっています。漆山氏に基本の蕎麦打ちを伝授していただきました。

■水回し 蕎麦の食感や味が決まる重要なポイント。粉と水が均等になるように、手早く混ぜるのがコツ。



1.蕎麦粉と水の分量を決める
一般的な“二八にはち蕎麦”では、蕎麦粉と小麦粉を8:2の割合で混ぜます。全部で500gを打つ場合、最初に蕎麦粉400gをボールに入れ、それに100gの小麦粉を入れて良く混ぜておきます。季節によっては、500gに100gでもいいでしょう。
※写真は蕎麦粉と小麦粉を混ぜてあるものを使用しています。



2.蕎麦粉に水を入れる
用意した水を入れていきます。1回目の加水は多めに入れます。少しずつ水を加えながら、指先を立てて素早く、しかも柔らかく手を動かし、蕎麦粉と水を混ぜ合わせます。蕎麦粉に水が均等に入るよう、手早く混ぜて、水分を全体に散らすようにして細かい粒にします。



3.水が粉全体にまんべんなく回るように混ぜる
2回目も同様に、左手で水を少しずつ入れて粉を包むように手早く混ぜます。季節によって湿気の具合で水加減を調整します。冬の乾燥している時期には水は多めにします。水が均等に行き渡るように手早く混ぜるのがコツです。



4.蕎麦がしっとりしてきたら水回しが完了
数回加水して、粉にまんべんなく回るようにかき混ぜます。水回しは、一部の粉で水を抱え込んでしまわないことがポイント。指先で手早く散らすようにします。乾いた粉が全部消えて、水分を含んでしっとりしてきたら水回しは完了です。
上へ

■こね 蕎麦のコシに影響する大切なパート。肘を伸ばして体重をかけ、生地をしっかりこねる。



5.蕎麦玉をひとつにまとめ、台の上でこねる
「こね」は蕎麦玉にさらに水を馴染ませていく作業です。小石ほどの大きさの蕎麦玉をこねながらまとめていき、いくつかのかたまりになったら、合わせてひとつにします。これから台の上でこねていきます。



6.蕎麦をこねてコシを出す
「こね」は、蕎麦のコシにも影響する大切な作業です。蕎麦玉を両手で押し付けるように、肘を伸ばして体重をかけて生地をよく練っていきます。腕の力だけでなく、肩に力を入れてしっかりこねます。



7.空気を抜きながら菊もみをする
利き手ではない方の腕を軸にしながら、利き手で内側へともみ込んでいきます。内側にもみ込んでいくと、蕎麦玉の中の空気が絞り出され、表面が菊のような模様になるので菊もみといわれる。表側にはへそのようなくぼみができます。



8.表面がしっとりとしてツヤが出てきたら完了
へそのある側を押さえこむように円錐形にします。円錐のてっぺんを上にして、丸く厚みのある蕎麦玉に形を整えていきます。表面がツルツルとしてツヤが出てきたら「こね」は完了です。
上へ

■のし 「地のし」、「丸のし」、「四つ出し」の順で、常に厚さを均等にのしていく。



9.打ち粉をたっぷりとかけて「地のし」をする
蕎麦玉に打ち粉をたっぷりとかけて、まず地のし(手で蕎麦玉を伸ばすこと)をしていきます。両手を重ねた手のひらで、上から押さえて平らにしていきます。



10.体重をかけて、手のひらでのしていく
蕎麦玉を回しながら、右手を上に左の手のひらで押してのしていきます。直径30㎝位の大きさになるまで、体重をかけて厚さが均等になるようにのしていきます。 



11.のし棒で「丸のし」をしながら、均等の厚さにする
のし棒を使って、丸のしをしながら大きな円にしていきます。上下に8回位ずつのし、45度回して同様に8回位のしていきます。常に全体の蕎麦の厚さを均等になるようにします。



12.「丸のし」から、角を出して「四つ出し」にする
さらに打ち粉をして、のし棒で生地を丸めて転がすと、巻き込まれた中央部分が延びて、先端が角になっていきます。次に反対側、右左とくり返し4ヵ所の角を出す「四つ出し」をします。 丸い形から四角い形になっていきます。



13.「四つ出し」した蕎麦を、さらに均等にのす
「四つ出し」した蕎麦を、のし棒でさらにのします。先に巻いたほうを外し、同様にのし全体が均等の厚さの長方形になるようにのします。
上へ

■たたみ 生地がくっつかないように、打ち粉をたっぷり振り、丁寧にたたんでいく。



14.巻き棒で蕎麦を巻いてたたむ
のしの工程が終わったら、横位置にして、全体に打ち粉をたっぷりと多めにかけます。たたんだときに生地がくっつかないようにするためです。



15.打ち粉をふって蕎麦をたたむ
下側を4/1折り返し、上側も4/1折り返します。折り返した部分に打ち粉をかけます。



16.もう1回上下からたたんでいく
さらにもう1度両側から、内側に重ねて折りたたんでいきます。この状態で、さらに上から打ち粉をたっぷりかけます。



17.上から3回たたんできて、1つに重ね合わせる
上の部分を重ねるようにさらに折りたたみ、6枚重ねにします。打ち粉をかけ、左側からさらに半分に重ねてたたみ、12枚重ねにします。これで、たたみが完了です。
上へ

■切り 打ち粉をたっぷり振って、一定のリズムを刻みながら蕎麦包丁で切る。



18.たっぷりと打ち粉を敷いて蕎麦を乗せる
まな板にたっぷりと打ち粉を敷いて、折りたたんだ蕎麦の生地を乗せます。切った蕎麦がくっつかないように、その上からもたっぷりと打ち粉をかけます。



19.同じ幅で蕎麦を切る
生地の上にこま板を乗せ、その端に包丁を当てて蕎麦を同じ幅になるように切っていきます。5度程度内側に傾けて、上下に歯切れよく切っていきます。



20.余分な打ち粉を振り落とす
適当な分量が切れたところで、麺がくっつかないようにするために、包丁を麺の下に入れて、一人前くらいの蕎麦を持ち上げて、蕎麦についている余分な打ち粉を振り落とします。打ち粉が余分についていると、茹でるときにお湯が汚れ、茹であがりが悪くなるので、ここでしっかり落とします。



21.バットに麺を入れる
切れやすくなっているので、余分な粉を払ったら、バットに紙を敷いて入れておきます。これで蕎麦打ちが完了です。
上へ

■つゆ 手打ち蕎麦は、美味しいつゆで決まる。蕎麦の風味と香りを引き立てるつゆで、旨い蕎麦をたぐる。

●「大松家」秘伝のつゆの作り方

1.
湧き水にまず煮干を入れ、煮立ってから他のだしの材料(宗太節そうだぶし鯖節さばぶし鰹節かつおぶし)を入れ、45分くらい煮立てます。
2.
だし汁ができたら漉します。
3.
溜り醤油(※)を加えます。
4.
冷えてから、もう1度溜り醤油を入れて味を締めます。

溜り醤油(※)・・・醤油(4~5):みりん(1):砂糖(0.5)程度の割合で合わせて、80℃くらいまで火入れして寝かせてまろやかにしたもの。自慢のたれは35年ものの返しを使用している。
上へ