話す職業に就こうと思ったのはいつ頃ですか。
桜林氏(以下、敬称略):
幼い頃から近所に聞こえるほど声が大きく、おしゃべりが大好きでした。親にもよく冗談で、将来はしゃべる職業に就きなさいと言われていましたね。ニュースキャスターが主役の映画を小学校の頃に観て、自分でもピンときました。自分で取材して原稿を書き、それを読む仕事に就こうと。
私たちは大勢の前で話すだけで緊張してしまいますが・・・。
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| いつも爽やかに笑顔で話す桜林さん。それが女性キャスターには欠かせない魅力のひとつでもある。 |
桜林:
プロの私たちでさえ、突然手が震えたり舌が回らなくなったり、突然そういう魔物が襲ってくるときがあります(笑)。そういうときに私は、
丹田といわれる下腹部に力をいれて緊張を和らげるようにしています。不思議と緊張が解けてくるのです。
いつも堂々と上手な話し方をしているベテランのアナウンサーでも前日にどうしようもなく不安で、街の占い師に相談していると本人から聞いたことがあります。どんな人でも緊張するものなのですね。話している最中に、話す内容を忘れたり、声が震えたりするという緊張は防ぎようがなく、慣れていくしか方法はありません。気を抜かないで話す緊張感は、むしろ必要なことです。
大勢の前で話すときに、緊張しても失敗しない工夫はありますか。
桜林:
話す内容を忘れてしまうからといって原稿を用意すると、読んでしまいますから避けたほうがいいです。でも緊張で話の順番が変わったり、話がそれてしまったり、内容を忘れたりと後悔することもありますね(笑)。その予防策として、メモを用意することをおすすめします。話がそれたとしても臨機応変に戻すようにすれば、聞き手は全然気がつきません。私の場合は、ひと通り話して時間を計り調整するようにして練習をしています。
魅力的な話し方のポイントを教えていただけますか。
桜林:
大勢の前であっても、1対1のときであっても、まず気張り過ぎないこと。聞く人が心地よく聞けるように意識することです。私も仕事を始めた頃は、話し方につい力が入ってしまって・・・。そうすると聞いている人は苦しくなってくる(笑)。
それから手話付きで司会をした時に、今までずいぶんと速く、自分勝手に話していたことに気づきました。手話で通訳することを考えると、ゆっくりとわかりやすい言葉で話さなければなりません。そうした経験からなるべくゆっくり、やわらかに、丁寧に話すことが大切だと思います。
実践で学んだことは他にもありますか。
プロでもさまざまな失敗の経験を重ねて上達していく。人を感動させる話し手になりたいと話す。
桜林:
あるスポーツ番組の実況をした時のことです。試合が終わった後に、「選手たちはよく頑張りましたね」と言ったらプロデューサーに怒られました。なぜだろうと思ったら、選手たちが練習してきた汗や苦労が表現できていないと。常にアンテナを張り、知識を情報収集しないと、人の心を打つ表現はなかなか出てこないものです。
相手の気持ちや置かれている状況を考えて話すと、言葉の表現に深みが出て説得力が出てきます。ニュースの読み方や、実況の仕方ひとつでも人を感動させることができるのですから、言葉の力ってすごいなと思います。どんな場所でも人を感動させる話し手でありたいと願っています。
会話をする時に、心がけることはなんでしょうか。
桜林:
1日中誰とも話さないと精神もどんよりしてきます。会話することは、自分の活性化にもなります。会話を円滑にするためには、相手の話をよく聞いて話すということです。相手に不快感を与えるような話し方でなく、柔らかい口調で話すと相手に気持ちがよく伝わります。時代で言葉が変わっていくのは仕方のないことですが、最近は言葉の乱れが気になります。日常の生活においても、日本人として正しい日本語で話してほしいですね。
(1) 下腹部(丹田)に力をいれると、緊張が和らぐ。
(2) 内容を忘れないために、メモを用意する。
(3) 気張らずにゆっくり、やわらかに、丁寧に話す。
(4) 相手の話をよく聞いて、相手の気持ちを考えて話す。
(5) 相手に不快感を与えず、柔らかい口調で話す。
(6) 正しい日本語で話す。
(7) 朗読はとくに呼吸と間を大切にする。