




6月に新潮新書から出た『男はなぜネクタイを結ぶのか』を面白く読ませていただきました。歴史上の人物や政治家、小説、映画の主人公などとネクタイのかかわりを語り、自然にネクタイの文化史的な読み物になっていますね。

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出石氏(以下敬称略):今回は書き方に工夫を凝らしました。これまでの男のファッションものというと、これはこう着なければならないとするルール・ブック的で少しも面白くなかった。それで読者との接点をどうするかで少々工夫したのです。私自身が語るのではなく、読者の知っている人物に語らせようと考えたのです。そういうことで、詩人バイロンに「ナポレオンになるより、ブラムメルになりたい」と言わしめた、世界一のしゃれ男ボウ・ブラムメルのこだわりや、蝶ネクタイ大好きなチャーチルがなぜポツダム会談のときだけ結び下げのネクタイをしていたのか等々、19の逸話を集めてみました。
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この中に、日本人でただ一人、画家の藤田嗣治が出てきますね。

出石:パリの画壇でもフジタ(レオナール・フジタ、1886-1968)は目立ちたがり屋だったようです。前衛的な衣装でパリっ子の度肝を抜き、フジタそっくりのマネキンがシャンゼリゼのショーウインドを飾るほどの人気者になりました。ある時フジタは、カフェで出会った女性に一目ぼれします。彼女の住所を突き止めたフジタは、一晩で絹のブラウスを縫い、彼女にプレゼント。その美しいウルトラ・マリンのブラウスを贈られた女性は感激し、後にフジタと結婚するのです。

フジタは裁縫もできたのですか。

出石:若い時パリで食い詰めたフジタは、ロンドンに行って百貨店のデザイナーになったことがあります。生来、手先が器用だったらしく、デザイナーになる前に象牙細工の職人もやっています。手首に腕時計の刺青を自分で彫ったくらいですから、裁縫など朝飯前だったのでしょう。そのままロンドンにいれば、世界的なデザイナーになっていたかもしれません。

この本には、そうした面白い話や蘊蓄ばかりでなく、ネクタイの結び方や巻末にネクタイ用語集まであって、ビジネスマンの教養書として手元に置きたい本だと思いました。


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