

―近年、糖尿病患者が非常に増えていますが、なぜでしょうか?
平田先生 : 30年前には糖尿病を発症するのは100人に1人の割合でしたが、平成19年国民健康・栄養調査結果によると、予備群を含めて成人の約2,210万人が糖尿病の疑いがあると言われています。日本の食生活の歴史を遡ってみますと、長い間、飢餓との戦いでもあったわけですが、昭和29年頃から徐々に生活が豊かになり、食事の内容にも劇的な変化がみられるようになりました。総カロリーは変わっていないのに、脂肪の摂取が急激に増えてきました。これが、糖尿病患者が急増している最も大きな原因と言えるでしょう。
―食生活が豊かになった弊害ですね。
平田先生 :
そうですね。食生活やライフスタイルの欧米化により、肉類などの動物性脂肪をたくさん摂るようになってきて、体内に糖質や脂質が溜まりやすくなってきているのです。さらに運動不足が加わって肥満になってしまうというケースが圧倒的に多くなっています。
一方、日本人はもともと糖尿病になりやすい体質とも言えます。糖尿病はすい臓から分泌されるインスリンの量が足りなかったり、働きが十分でなかったりすると発症しますが、日本人は体質的にすい臓からインスリンを分泌させる力が弱いと言われています。長い間、飢餓との戦いで血糖を下げる必要がなかった結果かもしれません。
―インスリンはどんな働きをするのですか?
平田先生 : インスリンは、すい臓のランゲルハンス島のβ細胞から分泌されるホルモンです。ホルモンのうち、有名なアドレナリンをはじめカテコラミン、副腎皮質ホルモンなどは「血糖を上げるホルモン」として知られていますが、「血糖を下げるホルモン」は、たったひとつ、インスリンだけです。食事をして血液中のブドウ糖の濃度が上がると、インスリンが分泌される仕組みがあり、血液中のブドウ糖を細胞内に取り込ませて、結果的に血糖値が下がるのです。だから、インスリンの働きが弱いと血糖が高くなるのです。
―糖尿病はインスリンの働きと関係が深いということですね。
平田先生 :
そうです。糖尿病はインスリンがどれだけ頑張って働いてくれるかにかかっていると言っても過言ではありません。糖尿病はインスリンの作用不足によって起こりますが、2つのタイプに分けることができます。ひとつは、インスリンが絶対的に不足するタイプ。すい臓のランゲルハンス島のβ細胞が破壊されることによって起こることが多く、「1型糖尿病」と呼ばれています。
もう1つは、インスリンがある程度、分泌されているにもかかわらず、ブドウ糖を受け取る側の細胞にある「インスリン受容体」が正常に働かないために、インスリンの効きが不十分になってしまうタイプ。これは「2型糖尿病」といい、患者の9割以上を占めています。
―糖尿病は、遺伝が関係するとも言われています。
平田先生 : 2型糖尿病を引き起こす原因のひとつに、「遺伝的要素」が挙げられます。実際、両親ともに糖尿病である場合、子どもが糖尿病になる確率はかなり高くなります。
―リスクの程度はどれくらいですか?
平田先生 : 片方の親が糖尿病だと25%、両親が糖尿病だと75%の割合で発症すると言われています。ですから親が糖尿病であれば自分も糖尿病になる可能性が高いと考えるべきです。またご自分が糖尿病なら子どもにもリスクがあるので、とくに食生活に注意する必要があります。しかし、親が糖尿病でも子どもが糖尿病にならないケースも多く、原因は必ずしも遺伝だけではありません。生活環境も大きいと考えられます。糖尿病は肥満が基盤にあって、しかも加齢とともに増えていく傾向にあります。
―血糖と年齢の関係はどうですか?
平田先生 :
血圧と年齢は比例関係にありましたが( vol.4高血圧参照)、糖尿病も年齢が上がるにつれて増えています。一番多いのは70歳以上の方で、総数は37.6%(男性:41%、女性:34.8%)です(下図参照)。やはり加齢とともにインスリンの分泌が弱まっているとも考えられるし、若い時に暴飲暴食をしてからだを酷使してきたからとも考えられます。
年次推移をみてみますと、糖尿病予備群を含めた推計は、平成9年には約1,370万人、平成14年には約1,620万人、平成19年には約2,210万人と急増しているのがわかります。

(厚生労働省「平成19年 国民健康・栄養調査結果の概要」より改編)
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