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- Vol.2 危ない!クスリの相互作用





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											 「クスリの相互作用」は、クスリを服用する時にはたいへん重要です。他のクスリと一緒に服用すると、効きめが強まったり弱まったりして変化してしまう場合や、副作用が出やすくなったりすることがあります。また、日常生活において、食品やアルコール・喫煙などの嗜好品などで、期待したクスリの効果以外の作用をもたらす場合があります。これらを含めて「クスリの相互作用」と呼んでいます。相互作用はすべてのクスリでおこるわけではなく、また人によって影響も異なりますが、複数のクスリを服用する場合は、危険な組み合わせもありますので注意しなければなりません。 | 



|  |  |  処方薬どうしの相互作用としては、いろいろなケースがあるので、かかりつけの薬局でひとつひとつ調べてもらうのが安心です。手軽に購入できる市販薬はどうでしょうか?何となく「安全」と思いがちではないでしょうか。市販薬は配合剤が多く、処方薬に比べると少なくしてあるのが多いのですが、やはり相互作用には注意が必要です。薬剤師のいる薬局で相談するのがよいでしょう。クスリどうしの不適切な飲み合わせの例を示してみましょう。 | 

■クスリどうしの注意すべき相互作用
|  薬品名 |  薬品名 |  起こりやすい相互作用 | 
|---|---|---|
|  ニューキノロン系抗菌剤:タリビッド,クラビット等 |  非ステロイド系の消炎鎮痛剤:ブルフェン,ナイキサン,ロキソニン等 | 一緒に服用した時に痙攣を起こしてしまう場合がある。 | 
|  痛み止め・解熱剤: イブ等 | 市販薬でも上記の症状が起こることがあるので注意が必要。 | |
|  血糖降下剤(糖尿病の治療薬) |  アスピリン:バファリン等 (サルチル酸系の解熱・鎮痛剤) | 血糖降下剤の作用が強く出すぎて低血糖になり、ふらふらになり倒れる。 | 
|  ワーファリン (血栓症の治療薬) |  痛み止め・解熱剤:バファリン | ワーファリンは血液を固まりにくくするクスリで、痛み止めや解熱剤も出血傾向を増す働きがあるため、出血を起こしやすい。 | 
|  胃酸を抑えるクスリ(H2ブロッカーなど):タガメット,ガスター等 |  水虫の治療薬(イトラコナゾール) | 一緒に服用すると、吸収が低下し効きめが悪くなる。 | 
|  カルシュウム補給剤 |  アルミニウムを含む制酸剤 | ある種の抗生物質などと、キレートを作り吸収されなくなり、効きめが悪くなる。 | 
|  セント・ジョーンズ・ワート(セイヨウオトギリソウ) |  強心薬(ジュキシン) 気管支拡張剤(テオフィリン) | 効きめが悪くなる。医薬品の代謝が促進され、薬剤の作用が弱まっている恐れがあるが、セント・ジョーンズ・ワートを急に中止すると代謝促進作用がなくなるため、医薬品の血液中濃度が高くなりすぎる危険性がある。医師の検査が必要である。 | 



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											 アルコールがクスリの代謝に影響を受けて、効きめが弱くなるクスリや、逆に効きめが強く出すぎたりするクスリがあります。アルコールそのものが「中枢神経を抑えるクスリ」なので、向精神薬や精神安定剤と一緒になると、作用が強く出たり、効く時間が長くなったり、さらには急性アルコール中毒や死に至るケースもあります。 | 


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											 喫煙については、それ自体が身体に悪い影響を及ぼすことはよく知られていますが、クスリの代謝や排泄などにも影響を与えることがあります。 | 

■嗜好品による注意すべきクスリの相互作用
|  嗜好品 |  薬品名 |  起こりやすい相互作用 | 
|---|---|---|
|  |  抗結核薬(イソニアジド):イスコチン,ヒドラ等 抗凝血薬:ワーファリン | クスリが速く代謝されてしまうために、効く時間が短くなることがある。 | 
|  糖尿病治療薬(インシュリン):ノボリン,イノレット等 | 作用が強く出るため、重い低血糖を起こすことがある。 | |
|  高血圧の治療薬:インデラル,アダラート,レニベース等 | 血圧降下作用が強くなるものがあり、めまいを起こすことがある。 | |
|  利尿剤:ルネトロン,ラシックス等 | 血液中のアルコール濃度が高くなるため酔いやすくなる。 | |
|  胃酸の分泌を抑えるクスリ (H2ブロッカーなど):ザンタック,タガメット,ガスター10等 | アルコールの代謝を抑えてしまうために、血液中のアルコール濃度が高くなるため酔いやすくなる。 | |
|  向精神薬:ハルシオン,ベンザリン,ユーロジン等  精神安定剤:セルシン,デパス等  坑うつ薬:イミドール,トフラニール等 | 作用が強く出たり、効く時間が長くなったり、急性アルコール中毒や死に至るケースもある。 | |
|  |  気管支拡張剤(テオフィリン):テオドール,テオロング等 | タバコでクスリの代謝が早まり、効果時間が短くなるので、クスリの量を1.5~2倍にする必要がある場合もありえる。 | 
|  狭心症の治療薬(プロプラノロール):インデラル,テノーミン等 | タバコに含まれるニコチンの影響で血圧が高くなることがある。喫煙により心臓は直接ダメージを受け、坑狭心剤の効果が上がらなくなる。 | |
|  経口避妊薬(ピル):マーベロン,オーソ等 | ニコチンで血の固まりが血管につまりやすくなるので、心筋梗塞や血栓などの危険性が高くなる。特に35歳以上で1日15本以上のタバコを吸う人でこのクスリを飲んでいる人は、心筋梗塞の発生率が吸わない人の11.7倍も高く、40歳以上では危険率がさらに高くなる可能性がある。 | |
|  精神安定剤:セルシン,コントール等 | 喫煙で作用が弱まってしまうものがある。 | |
|  睡眠薬:バルビタール等 | 睡眠が逆に妨げられてしまうものがある。 | 



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											 クスリとジュースの飲み合わせでよく言われているのは、グレープフルーツジュースの場合です。グレープフルーツジュースが影響を及ぼすクスリとしては、血圧を下げるクスリ「カルシウム拮抗剤」、アレルギー性のクスリ「トリルダン」、気管支を広げるクスリ「テオフィリン」などが代表的です。これらのクスリとグレープフルーツジュースを同時に飲むと、クスリの血中濃度が上がるため、効きめが強く出すぎてしまうことがあります。まだ解明されていませんが、グレープフルーツジュースの成分である「フラボノイド」が薬剤の吸収に影響して、薬剤の血中濃度が高くなり、クスリの効果が強く出てしまうといわれています。グレープフルーツの果実ではどうかというと、心配はないようです。 | 

|  |  |  テトラサイクリン系の抗生物質(アクロマイシン,ミノマイシン等)は、牛乳の中のカルシウムに影響を受け、吸収が悪くなり効きめが悪くなる恐れがあります。乳幼児の場合、ミルクや牛乳と一緒にクスリを服用させたり、混ぜたりする方がいますが、吸収が悪くなったり、効きめがなくなったりするので注意が必要です。また、腸で溶けるようにコーティングしてあるクスリの場合、牛乳によりコーティングが溶けてしまうことがあるので、牛乳に混ぜてクスリを服用させるのは避けたほうがよいでしょう。 | 

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											 胃酸の分泌を抑えるクスリには、コーヒー・紅茶・緑茶に含まれるカフェインに影響して、カフェインの効きめが強く出たり、作用時間が長くなるものがあります。また、カフェインの興奮作用により、鎮静剤が効かなくなることもあります。 | 

■飲み物による注意すべきクスリの相互作用
|  飲み物 |  薬品名 |  起こりやすい相互作用 | 
|---|---|---|
|  |  降圧剤(カルシウム拮抗剤):アダラート,ニバジール,ワソラン,バイミカード等 アレルギーのクスリ(テルフェナジン):トリルダン 気管支拡張剤(テオフィリン):テオドール,テオロング等 | クスリの血中濃度が上がるため、効きめが強く出すぎてしまう。 | 
|  |  抗生物質(セファレキシン系やテトラサイクリン系など):ケフレックス,ミノマイシン等  下剤の一部:コーラック等 | 牛乳の中のカルシウムに影響を受け、吸収が悪くなり効きめが悪くなる恐れがある。 | 
|  |  カフェイン配合のカゼ薬 胃・十二指腸潰瘍治療薬(シメチジン製剤):タガメット,ダンスール 等 | カフェインによる副作用で手のふるえ、めまい、不眠、不整脈など。 | 
|  気管支拡張剤(テオフィリン):テオドール,テオロング等 | 不眠、不穏 | |
|  |  鉄剤:フェログラデュメット,インクレミン等 | 「タンニン酸鉄」という物質ができて吸収されなくなる。 | 
|  |  アスピリン: バファリン等 | アスピリンの吸収が悪くなり効きめが悪くなる。 | 


意外に知られていないのが、食べ物とのクスリの相互作用ではないでしょうか?体によい食べ物と思っていたものに意外な落とし穴があります。もう一度、自分が服用しているクスリの成分を確かめて、医師や薬剤師に食べてはいけないものや飲んではいけないものを確認しておくのがよいでしょう。


血栓症の治療のためのワーファリン(抗凝血剤)を服用している方は、ビタミンKに注意しまければなりません。ビタミンKは、ワーファリンの作用を弱めてしまうので、逆に血液が固まりやすくなり、血栓ができやすくなります。特に、納豆を食べた場合、血中のビタミンKは増加し、影響が3,4日持続してしまうことがあります。ワーファリンを服用している方は、納豆を食べることを避けなければなりません。納豆の原料である大豆は、ビタミンKの含量はさほど多くないのですが、納豆菌がビタミンKの合成能力が高いために、納豆を食べると腸の中で多量のビタミンKが合成されてしまうのです。納豆の他にも、ホウレン草やブロッコリーやキャベツなどの緑黄色野菜や、健康食品のクロレラなどにビタミンKを多く含んでいます。ワーファリンを服用している方は、多量のビタミンKをとることは避けたほうがよいでしょう。

キャベツやカリフラワーに含まれる成分で「ヨウ素」の吸収が抑えられるため、これらの野菜を大量にとってはいけません。

マグロやサンマと一緒にとると、顔が赤くなったり、頭痛がすることがあります。これは、魚に含まれるヒスタミンの代謝を結核治療薬のイソニアジドが抑えるため、体内にヒスタミンがたまり、アレルギー性の中毒症状を起こすためです。


								 このように、クスリの相互作用はクスリどうしだけでなく、嗜好品や食品などでもおこります。全ての人に同じように起こるということではなく個人差もあるようです。クスリの相互作用をおこさないためにも,クスリを服用する時は,水か白湯で飲むことが大切です。クスリとクスリの相互作用だけでなく、注意しなければならない嗜好品や食品についても、医師や薬剤師にアドバイスを受けておいたほうがよいでしょう。
								 また、複数の病院にかかっている患者さんにとって、それぞれの医師からからクスリを処方されるのはよくあることです。患者さんがそのクスリの相互作用をチェックすることはたいへん面倒です。ぜひご自宅の近くに、「かかりつけの薬局」を決めておくことをおすすめします。信頼できる薬剤師が、調剤してもらう時も、市販薬を買う時も、クスリに関する情報とあなたの体質を総合的に判断し、飲み合わせのチェックなどもしてくれます。
								 また、「お薬手帳」にクスリの記録を残しておき、医師や薬剤師に提示するとクスリの相互作用のチェックがしやすくなります。また、複数の病院にかかる時には、他の病院で服用しているクスリを必ず伝えることが、クスリの相互作用をチェックするのにとても重要なのです。
							

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