大事なことは、相続税の軽減の計算過程で、算出相続税額から控除する金額は、その配偶者の算出相続税額止まりだということです。控除した結果マイナスとなることは駄目だということですね。万が一マイナスを認めるとしますと、そのマイナス分は他の相続人から控除することになるかと思いますが、その相続人は配偶者ではあり得ませんので、「配偶者の軽減」ということにはならなくなってしまうからです。日本では重婚は認められていません。
また、「相続税の総額」とは、被相続人が持っていた、また持っていたとみなされた財産から債務控除をした後の課税価額を一旦
法定相続人が法定相続分で取得したと仮定して、それぞれに税率をかけて算出された金額の合計額でした。そして、その相続税の総額を実際に分割して取得したそれぞれの相続人の、その取得価額の割合に応じて按分した結果の金額が、それぞれの相続人の算出相続税額です。
ただし、その算出相続税額の次にある規定を適用した場合はその適用後の金額が算出相続税額となります。この相続税の配偶者の軽減の規定の前にあるのは、第18条(相続税額の加算)と、第19条(相続開始前3年以内に
贈与があった場合の相続税額)ですが、第18条の『相続税の加算』の規定は配偶者には適用がありませんので、条文の上からは除外されているものです。
これは、「第1項第2号ロ 当該相続又は遺贈により財産を取得した配偶者に依る相続税の課税価格に相当する金額」の計算をする場合の未分割財産の取り扱いです。
「未分割」とは、相続人などがみんな素直で自己主張をあまりせず、和を保って相続の協議分割に協力するというならば、まず未分割という事態はないと考えられますが、なかには相続について争いが起こったり、また分割がなかなかできづらい相続財産などがあったりしますと、相続税の申告期限までに協議分割に決着がつかない場合もあるのです。そのような状態、つまり財産を誰が取得するのかがまだ決まっていない状態を「未分割」といいます。この未分割財産は『配偶者の相続税額の軽減』の規定の適用の上では、「ないものとしなさい」、ということです。そして、「その分割ができたときに正しく直しなさい」、というものです。
この規定からもわかるとおり、相続が開始した場合、その相続の申告期限までに財産の分割が決定していなくても、他の条件が整うのならば、申告義務が発生します。他の条件のなかには一般に相続税の課税価額の合計額が基礎控除額以下である場合があります。この場合には申告義務もありません。また、この『配偶者の相続税額の軽減』の規定があるから、まだ配偶者が健在の場合には相続税額が発生するような相続は数が少ないでしょう。
この『配偶者の相続税額の軽減』の規定を適用して、初めて納付する相続税額がなくなるような場合には申告義務があるのですから、注意しましょう。
本条文の第3項と第4項は、添付書類を付けなさい、万が一付け忘れた場合でも普通の場合は後で提出してくれればこの規定を適用しますよ、という趣旨の規定です。
これは簡単にいえば、悪いことをした者にはこの優遇規定を使わせないというものですね。相続財産を「仮装隠蔽」して申告した場合に、それが後になって発覚したとき、この配偶者の相続税額の軽減の規定は原則として使わせない、というものです。「仮装隠蔽」ですから、意思をもって隠したり作ったりしたものをいいます。うっかりミスまでは税務は責めるものではありませんが、うっかりミスも「うっかりミス」だと証明するのも大変です。ミスをしないようにしたいものです。これは僕自身に言い聞かせている言葉と思ってください。