相続が度重なった場合でも相続税法ではその調整をしています。つまり、短期間で同じ財産が二度相続で、持ち主が移転したときは、その度に係る相続税を減額するシステムになっています。ここでも税法の「思いやり」というか、それらしいものが感じられますね。
さて、相続の開始が誰の目から見て「相次いだ」場合ということでしょうか。今第1順位の相続を考えてみましょう。第1順位は、両親とその子供という親族関係です。子供が1人の場合を想定します。

右の図を見てください。まず父親が被相続人となった場合の相続人について、その相続の相続人は「母」と「子」です。父親の財産の流れを頭に描いてください。その相続で「法定相続分」で財産が承継されたとしますと、父の相続財産の全体が100だとすれば、相続分は母と子がそれぞれ2分の1ずつですので、「母」が50、「子」が50引き継ぎます。
このとき「母」が単独で形成した財産は30だったとしますと、父の相続後に「母」の財産は自分の財産30と父から承継した財産50の合計の80ということになります。
そして今度は「母」が被相続人になった場合を考えます。既に「父」は死亡しているのですから、「母」の相続に対しての相続人は「子」のみです。そして「子」が母の相続財産80を全て承継します。では「父」と「母」の相続に対してそれぞれ相続税が次のようにかかった場合を見てみましょう。「父」の相続に対して相続税が「母が1」「子が1」係ったとすれば、「父」の相続後の母の財産は自分の財産30と父からの承継分「50−1=49」との合計、つまり79です。そして「母」の相続ではこの79の財産が「子」にわたりますので、これに税金が2係ったとすれば79−2=77の財産を、「子」が貰うことになります。さて、ここで賢明な諸君はすぐに気づくでしょう。はじめの相続、つまり「父」の相続の財産100のうち、「母」が承継した50については、「母」の相続で再び相続税が課税されているのです。「父」の相続で「子」が貰った50についての相続税は1回係っています。「母」の相続で「子」が貰った財産のうち「母が父から承継した49」には既に1回相続税が係っているにもかかわらず、今度も相続税が係ります。つまり2度相続税を課税されているのです。
この関係を極端に考えた場合、今日「父」の相続があり、明日「母」の相続が開始したら、まるで二重課税の状態と考えられませんか?ある財産の移転が短期間に行われた場合、この二重課税の影響をなくすために、この「相次相続控除」の制度があるのです。そして法律ではこの短期間を「10年」と考えています。
両親が揃って死亡する場合はそれほど多くはないでしょう。しかし10年という期間を考えれば必ずしも無くはないものです。二重課税になりそうなものは排除している、ということを理解していただければよいと思います。