


今まで10回にわたって、『相続税法』を解説してきました。それは、何かを考える場合には、「まず森を見よ」という言葉から、「まず相続税法とはどんなものか?」ということに力点を置いて試みてきたつもりです。「木を見て、森を見ていない」という言葉を耳にすることがあると思います。相続税法という全体像を把握することの方が、その中の細かい規定を理解すること以上に重要だということです。今回からは少し内部に入り込んで解説していきたいと思います。


相続税に戻ります。思い出してください。相続税額を算定する前段階で、被相続人の財産を確定するには次の計算式で行うことを説明しました。


この計算式を書き直します。今まではこの計算式の方が理解しやすいと考えたからこれを使いましたが、本当は次の計算式になります。


2つの式の違いは、上の式では『消極財産』とあるのが、下の式では『債務控除』となっていることです。これは『債務控除』といわれるものの中には『消極財産』も含まれるためです。つまり「債務控除=消極財産+その他のもの」です。それでは『債務控除』を解説していきましょう。


この債務控除を解説する前提として、『相続税の無制限納税義務者』と『相続税の制限納税義務者』という言葉を覚えてください。言葉の意味から、『無制限納税義務者』とは「制限がない、つまり全部」ということがわかりますし、『制限納税義務者』は「制限がある」ということがわかります。では、一体何に対する制限なのかというと、それは課税される『財産』に対してなのです。
この『無制限納税義務者』と『制限納税義務者』の区別ですが、簡単には、日本に住所があるかないかといってよいでしょう。相続税の納税義務者が、日本に住所を持っていれば『無制限納税義務者』、海外に住所があれば『制限納税義務者』になります。
また、相続税の課税財産の範囲という規定があり、相続税の無制限納税義務者に対しては、『相続』または『遺贈』により取得した財産の全部に対して相続税がかかり、相続税の制限納税義務者に対しては、「日本国内にある財産にだけ」相続税がかかるとされているのです。
そして、『債務控除』はこの無制限納税義務者と制限納税義務者では範囲が異なります。
●相続税の無制限納税義務者(日本に住所を有する者)の場合
| 一. | 被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含む) |
| 二. | 被相続人に係る葬式費用 |
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●相続税の制限納税義務者(海外に住所を有する者)の場合
| 一. | その財産に係る公租公課 |
| 二. | その財産を目的とする留置権、特別の先取特権、質権又は抵当権で担保される債務 |
| 三. | その財産の取得、維持又は管理のために生じた債務 |
| 四. | その財産に関する贈与の義務 |
| 五. | 被相続人が死亡の際日本国内に営業所又は事業所を有していた場合においては、その営業所又は事業所に係る営業上又は事業上の債務 |
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『その』という言葉が各項目についています。これは課税される財産が日本国内にあるので、その日本国内にある財産を指しているのです。


さて、上記の計算式の『債務控除』ですが、無制限納税義務者の場合には、例えば借入金は『債務控除』として原則認められます。しかし、制限納税義務者の場合には、その借入金は、相続財産に計算される財産の取得、維持または管理のために生じたものでなくてはなりません。
一例をあげますと、外国にある土地を借入金で購入していた被相続人の相続が発生し、その相続で取得した相続人などが、相続税の制限納税義務者であれば、もともとその外国にある土地は相続税の対象になりません。その購入に伴う借入金という消極財産も、相続税の対象から外しているということです。
だから今まで使ってきた計算式は、相続税の無制限納税義務者にしかあてはまらないのです。



正確には、次の計算式になるのです。



vol.10までは「森を見る」ために解説してきましたので、相続税法を大局的に理解していただくことが目的でした。これからは随所で、細かく森の中の「木を見る」解説をしていきたいと思います。



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1952年生まれ/血液型A型
横浜市立大学商学部経営学科卒業
昭和63年1月事務所開業以来「歌って踊れる税理士」として多数のクライアントを持ち、仕事に忙殺されながらも税理士事務所のユニークなホームページを開設しています。
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