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鈴木千弘税理士の法律講座 VOL.10 バックナンバー

贈与税にもある非課税財産
相続税に関する用語解説

 贈与の場合もすべての場合に課税されるとは限りません。税法はその性質、当事者の状態、その他世間の環境に応じて必ずといっていいほど、『非課税』扱いをするものがあります。なんでも税金を取るというものではありません。税金という言葉の響きから「恐ろしい」と感じる前に、その内容を知る必要があるでしょう。

知っておきたい贈与税の非課税財産

 贈与は、ある人がある人に「これこれをあげるよ」と言い、その貰う人が「はい、戴きます」と言って初めて成立します。「そんな物いらない」と言えばそれは贈与ではありません。そしてその贈与という事実にもとづいて、税金が課されているのです。それが『贈与税』といわれるものです。前回のタイトルで『相続税と贈与税は、車の両輪〜切っても切れない腐れ縁』といいました。相続も贈与も、物の所有権が『相続』と『贈与』という事実で移転するところに、課税の理由があります。そして生前に贈与してしまえば相続税を免れることができるから、ということで2つの関係は繋がっているのです。
 贈与税にも、その贈与される財産の性質、またはその贈与の形態によって課税を行わないのが正当と考えられるものがいくつかあります。
 相続税と同じように、贈与税にも非課税財産があります。まず条文を掲載します。

贈与税の非課税財産 第21条の3
 次に掲げる財産の価額は、贈与税の課税価格に算入しない。
一.法人からの贈与により取得した財産
二.扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの
三.宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者で政令(令第4条の5)で定めるものが贈与により取得した財産で当該公益を目的とする事業の用に供することが確実なもの
四.所得税法(昭和40年法律第33号)第78条第3項に規定する特定公益信託(以下この号において「特定公益信託」という。)で学術に関する顕著な貢献を表彰するものとして若しくは顕著な価値がある学術に関する研究を奨励するものとして大蔵大臣の指定するものから交付される金品で大蔵大臣の指定するもの又は学生若しくは生徒に対する学資の支給を行うことを目的とする特定公益信託から交付される金品
五.条例の規定により地方公共団体が精神又は身体に障害のある者に関して実施する共済制度で政令(令第2条の2)で定めるものに基づいて支給される給付金を受ける権利
六.公職選挙法(昭和25年法律第100号)の適用を受ける選挙における公職の候補者が選挙運動に関し贈与により取得した金銭、物品その他の財産上の利益で同法第189条の規定による報告がなされたもの

かいせつ

1.法人からの贈与により取得した財産

 法人というのは『会社』のことです。会社のことを法人というのに対し、私たちのことを『自然人』と呼んでいます。
 法人が個人に対し財産を贈与するとします。この場合は法人税法の問題と所得税法の問題が混在しています。財産を取得した方、つまり法人から財産を貰った個人を考えますと、これは所得税の問題となります。実に難しいものですが、簡単にいえば、その個人が会社に何らかの関係を持っていれば、給与や賞与として課税され、何も関係がなければ『一時所得』として課税されます。
 『所得税法』という法律があります。これは皆さんがよくご存知の「3月15日までの確定申告」と同義ではありませんが、そのことだと思ってください。
 所得税では10種類の所得に分けられます。一番オーソドックスなのは『給与所得』でしょう。会社に勤めていて、働いたことに対する見返りとしての給料、これが給与所得です。ボーナスも給与所得です。退職した時に貰う退職金は『退職所得』。土地などの物を売って得たものは『譲渡所得』。そのほかに、株式を持っていてその株式の発行法人から受け取る配当は『配当所得』、定期預金を銀行にしていて、1年後に受け取る利子は『利子所得』、家を持っていて、その家を人に貸して毎月貰う賃貸料にかかる所得は『不動産所得』、山を持っていて立木を伐採して得る所得や、その山を売った場合の所得は『山林所得』、商売をしているような場合は『事業所得』、そして儲けを見込んで継続的にする行為ではなく、また労働の対価でもないものは『一時所得』、そして以上の9種類に該当しないものは『雑所得』とされます。
 法人から貰ったものが、労働の対価であれば『給与所得』、または『退職所得』として課税され、たまたま貰ってそして労働の対価でもなければ『一時所得』として課税されます。つまり、「法人からの贈与により取得した財産」は既に所得税で課税されているものですから、贈与税では『非課税』とされているのです。二重課税の防止ですね。

2.扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与

 「親は子供の面倒を見なくてはならない」ということは一般常識です。こういった場合の親を子供の扶養義務者といいます。たとえば子供が学校に行くのにかかる費用を親が工面します。至極当然のことのようですが、本来からいいますと、子ども自身が稼いだお金で学校に行くところを親が稼いだお金で子供を行かせていますので、親から子供に対して贈与があります。しかし、これを『贈与』として課税したらどうなるでしょうか。無理ですよね。このような場合、贈与税は非課税となっているのです。

3.宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者

 公益、つまり自分だけではなく広く一般に役立つことを行う者が贈与により取得したものに対して課税しますと、本来の目的が税金部分だけできなくなってしまいます。それで非課税とされています。ただし、あまり長い間公益事業にその財産を使わない状態が続くと、公益性に疑問が生じますので、相続税と同じように2年という時間を区切って、その財産が公益事業に使われた場合だけ非課税扱いとされています。

4.所得税法第78条第3項に規定する特定公益信託

 これらはやはり社会に対する貢献が大きいということに着目して、非課税とされているものです。

5.条例の規定により地方公共団体が精神又は身体に障害のある者に関して

 社会的に弱者である障害者を保護するために、贈与税でも非課税とされています。

6.公職選挙法の適用を受ける選挙における公職の候補者が選挙運動に関し贈与により

 選挙というものは国民全体にとって非常に大切な行為です。それに関連して金品の贈与をしてもそれはやはり課税されるべきものではないでしょう。ただし無制限にこれを行うと癒着だとか贈賄収賄だとかいろいろと面倒なことが懸念されます。それで、所定の報告をしたものだけが非課税となっています。


鈴木 千弘先生のプロフィール

1952年生まれ/血液型A型
横浜市立大学商学部経営学科卒業
昭和63年1月事務所開業以来「歌って踊れる税理士」として多数のクライアントを持ち、仕事に忙殺されながらも税理士事務所のユニークなホームページを開設しています。

●税金のことならあらゆるご相談を受け付けています。
E-mail : csuzuki@mtj.biglobe.ne.jp

●すーちゃんホームページはこちら
http://www5b.biglobe.ne.jp/~s-chan/


「鈴木千弘税理士の法律講座」バックナンバー

VOL.1 相続税は生きている人の責任
VOL.2 相続は悲しみを乗り越えて
VOL.3 相続税の計算(1)〜第一順位の相続の場合〜
VOL.4 遺言と相続税との関係
VOL.5 相続税の計算(2)〜3年内生前贈与財産の加算の規定〜
VOL.6 知っておくと得する、非課税財産(1)
VOL.7 知っておくと得する、非課税財産(2)
VOL.8 まだ一人前ではないですよ、未成年者の諸君
VOL.9 相続税と贈与税は、車の両輪〜切っても切れない腐れ縁〜
VOL.10 贈与税にもある非課税財産
VOL.11 知っておきたい相続税の債務控除
VOL.12 気になる『財産評価』(1)〜居住用土地の例〜
VOL.13 気になる『財産評価』(2)〜居住用土地の評価額算出法〜
VOL.14 相続税の計算(3)〜障害者控除の規定〜
VOL.15 もしも不幸が重なってしまったら〜相次相続控除の規定〜
VOL.16 夫婦間の贈与は慎重に!〜贈与税の配偶者控除の規定〜
VOL.17 相続税法の体系
VOL.18 相続税の申告
VOL.19 人生を共に歩んだ配偶者は優遇される〜配偶者の相続税額の軽減〜
VOL.20 遺産分割が決まらない時には(1)〜未分割遺産に対する課税〜
VOL.21 遺産分割が決まらない時には(2)〜未分割遺産に対する課税と寄与分の規定〜
VOL.22 相続税の納め方
VOL.23 勉強の成果を確認しよう〜相続税についての理解度をチェック〜

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