
2008年5月、東京大学医学部・医学部附属病院は創立150周年を迎えた。本書は、その記念事業の一環として刊行されたアルバムである。
本書に収録された資料は、明治35年から大学紛争の頃までの卒業アルバムを中心とし、そこに幕末以来の関連資料や遺族の方が保存されていた秘蔵写真などを加えて編纂されている。創立以来、わが国の医学や医療のあり方に大きな影響を与えた東大医学部の歴史にとどまらず、日本の近代医学の歩みと近代史を臨場感ある写真と文章によって偲ぶことができる貴重な資料である。
本書について、東大の卒業生である作家・立花隆氏と大江健三郎氏が感想を寄せているので紹介しよう。
まずは、立花氏のブログから――。
「創立一五〇年ということは、幕末の安政五年創立ということ。この年神田お玉ヶ池に種痘所が設けられた。ここで種痘が行われただけでなく、医学生教育も行われはじめた。文久元年に種痘所は西洋医学所と改称された。鳥羽伏見の戦いでは、ここが病院になった。一時ここには新選組の近藤勇、沖田総司、土方歳三なども入院し、新選組分裂の舞台となった。驚くほど情報量が多い本で、近代日本の医学史、社会史、文化史をいろどる多彩な資料を満載。」
発行:中央公論新社
定価:17,850円(税込)
一方、大江氏は本書に収録された写真の中に医業の道から文筆の世界へと転身した作家・安部公房、評論家・加藤周一両氏の顔を見つけながら、次のような感慨をもらしている。
「私はさきのアルバムを飽かず眺めていて、この国の近代医学の始まりから、インターン制度をめぐる闘争での教授と学生対決のスナップまで、じつにしみじみと大学での歴史、伝統、独特の文化の成立が、人間の顔をして表れるのに引き込まれました。」(朝日新聞「定義集」の記事より)
450ページを超える本書は、永井良三教授(循環器内科)を中心とする記念アルバム編集委員会によって編纂された。日本における西洋医学の導入と発展の歴史を振り返り、今後の医学の行く末に思いを馳せる上でもまたとない一冊といえよう。