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韓国文化を探る VOL.4 バックナンバー
韓国文化を探る vol.4 韓国の伝統文化が今なお色濃く残る安東市河回村。河回村の郷愁を誘う風景は、訪れる人を魅了します。今回は、河回村の伝統文化の魅力を探ります。 文・写真/島本美由紀

河回村の伝統文化

安東市の西部に、300〜500年前の伝統家屋が立ち並ぶ、村全体が重要民俗資料に指定されている河回村があります。初めて訪れたのにどこか懐かしい風景を見るようです。今回は、韓国伝統を残す村「河回村」を案内します。

河回村全景。河が村を取り囲むように流れ、村全体を船に見立てている。

河回村(ハフェマウル)を訪ねて
韓国の伝統が息づく河回村。
 ソウルから3時間。慶尚北道にある安東(アンドン)市は、古くから儒教思想の中心地として知られてきました。
 この安東市の西部に、両班(ヤンバン)文化の里と呼ばれる河回村という集落があります(両班とは、朝鮮王朝時代の支配階級を指した呼び名)。洛東河(ナクトンガン)が村を取り囲むように流れていることから、河回村と呼ばれるようになりました。
 河回村は、文禄・慶長の役の際に、朝鮮王朝の宰相として豊臣軍と戦った柳成龍をはじめ、多くの官僚や学者を輩出した村だそうです。また、地方においては地主階級となって祭祀を司るなど、地域文化の担ぎ手の役割を果たしてきました。朝鮮民族の精神と誇りが暮らしの中に息づいて、李氏朝鮮を支えた両班たちの文化が今も色濃く残っています。
 1999年にイギリスのエリザベス女王が来訪したことで、それまで韓国人の目には、どこにでもある田舎町としか映らなかったこの場所が、「韓国の伝統が息づく村」と世界の人々からも注目を浴びるようになりました。300〜500年前の韓国式の伝統家屋が立ち並び、現在でも人々が昔のままに暮らす村。湖畔の美しい風景が広がり、その周辺景観の素晴らしさに現在では多くの外国人が訪れています。
土塀道をたどり朝鮮時代の原風景へタイムスリップ
どこか懐かしい風景を感じさせる土の塀。
 河回村は、風水的に地勢、水勢、山勢の3つの条件が揃った理想的な場所だといわれています。河回村の周りをぐるりと河が取り囲んでいる様子は、今にも出航する船に例えられているそうです。一族の人々や財産を乗せた船が沈まないように、塀は石を積みあげて作ったものではなく、軽い土で塀を作りました。土壁と同じく、船の底に穴を開けないという意味で、村には井戸を作っていないそうです。初めて訪れたのに、どこか懐かしい風景で安らぎを感じるのは、この土の塀のせいかもしれません。くねくねと続く土塀に沿って、道の奥へと迷い込むと村の中はまるで迷路のよう。すぐに自分がどこにいるのか分からなくなってきますが、ふとタイムスリップしたような気分になってきます。
朝鮮時代の名残り「伝統家屋」
 河回村には、毎日たくさんの観光客が訪れますが、もっと韓国を感じたい方にはぜひ伝統家屋の民宿に泊まってみることをお勧めします。
 河回村の中には、伝統家屋をそのまま民宿として開放している家がたくさんあり、部屋は、4.5畳ほどの大きさで1部屋¥2,500ほど。寒さの厳しい冬には、かまどに火を入れて部屋を暖める昔ながらのオンドル部屋となっています。ホテルのように清潔で便利ではなく素泊まりが大半ですが、朝鮮時代の趣や人情を感じられる貴重な体験になるでしょう。
 また、韓国客がいない時間帯こそ、本当の河回村が楽しめると思います。
朝鮮時代の趣が感じられる伝統家屋。
 洛東河(ナクトンガン)が村を巡るように流れる風光明媚な場所だけに、河が輝き出す夕暮れ風景は見逃せない美しさです。皆が寝静まった真夜中は、まったく音もなく、月明かりが土壁の風景をうっすらと照らし幻想的な世界になります。
 都会から離れこの村でゆっくりと過ごして静かな朝を迎えれば、日常のストレスもすっかり消えてしまいそうです。ぜひ河回村で、生きた博物館を体験してみてはいかがでしょうか。
伝統文化を継承する「仮面劇」
 河回村に伝わる伝統文化といえば、仮面劇。これは、巫俗(ふぞく)儀式の仮面劇のことで、12世紀頃より、庶民によって演じられてきました。両班に対する庶民の不満を、ユーモアたっぷりに表現していて、見る物の笑いを誘います。観光シーズンの週末には、河回村の広場ステージで、仮面劇が演じられるそうです。この仮面劇は20世紀前半に1度途絶えたそうですが、村の人たちの努力によって30年ほど前に復活したそうです。
 河回村の入口には仮面製作者が建てた河回洞仮面博物館があり、約200坪の展示室に500点の世界のお面がずらりと展示されています。仮面劇の世界をのぞいてみるのも面白いです。毎年秋に行われる「安東仮面劇フェスティバル」は、今では韓国内でも最大級を誇る祭りになっているそうです。
安東の郷土料理「安東ホチェサパップ」
伝統料理の素朴な味のホチェサパップ。
テーブルいっぱいにお皿が並ぶ。
1人前¥600くらい。
 歴史に彩られた安東では、どんな郷土料理が育まれてきたのでしょうか。
 安東食文化の真髄ともいわれるのが「安東ホチェサパップ」。韓国では、祭祀の際にご先祖さまにごちそうをお供えします。長い祭祀を終えて、お供えをビビンバにして食べるのが楽しみだったようです。同じ食材を使って普段でも食べられるようにしたのが、このホチェサパップ。つまり祭祀がないときでも、このご馳走を食べられるようにと考え出された伝統料理なのです。
 儒教の中心地、安東は他の地方にくらべて祭祀を尊ぶことから、祭祀の料理が定着し有名になったといわれており、山菜のナムルをご飯に入れ、塩と醤油で味を調えてビビンバにし、串焼きや煮物、焼き魚などと一緒にいただきます。河回村の中にはホッチェサパップを食べられる食堂がたくさんあり、昼どきには河回村見学の観光客でにぎわいます。できれば昼どきをはずして、洛東河を渡ってくる爽やかな川風を感じながら、ゆっくりといただくのがいいでしょう。田舎料理の素朴な味をぜひ味わってみてください。
大ブームの安東料理「チムタッ」

店先で豪快に料理をする韓国のアジュンマ(おかあさん)。

爆発的にブームになった「チムタッ」。お腹いっぱいでもやめられない味。

 韓国でここ数年爆発的に流行したのが「チムタッ」です。「チムタッ」は鶏肉と野菜を甘辛く煮込んだ料理で安東地方の郷土料理のひとつです。鶏一羽を丸ごと使った韓国では珍しい醤油ベースの大皿料理で、ネギ、ジャガイモ、春雨などが一緒に煮付けられています。
 河回村の食堂でも食べられますが、安東駅近くの繁華街にあるチムタッ横丁がお勧めです。チムタッの専門店がずらっと並び、一国一城の主であるアジュンマ(おかあさん)が、表の厨房で腕を振るっています。ぶつ切りにした鶏肉を、醤油、砂糖、唐辛子、にんにくなどを使って強火で豪快に煮込みます。
 小さな店がひしめき合っているため、店の中は、6〜7人座ったらいっぱいです。どこも同じような店構えですが、美味しい店を選ぶなら混んでいる店を選ぶことですね。お腹いっぱいでも、その奥深い味とあと引く美味しさに、みなさんもやみつきになるでしょう。
島本美由紀(しまもとみゆき)プロフィール

1975年生まれ。韓国人の父と日本人の母の間に生まれ、幼い頃から韓国料理・文化に慣れ親しんで育つ。韓国料理教室「さらみ」主宰他、旅好きな料理研究家としても雑誌やテレビで活躍している。著書『ビューティ・ソウル』(情報センター出版局)、『韓流グルメガイド』(彩図社)好評発売中。旅のエッセイの他、フードジャーナリストとしても執筆多数。

島本美由紀さんのHP http://www.toshima.ne.jp/~miyumiyu/

バックナンバー

VOL.1 韓国料理の美味しい食べ方 ―ビビンバ編―
VOL.2 韓国のお酒スタイルと韓国料理
VOL.3 韓国の伝統茶と伝統菓子
VOL.4 河回村の伝統文化
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